【巻頭言】
経営進化モデル
プロセス革新で勝つ経営

1.
現場主義のモデル化
進化する業務プロセスの「型」の追求:
標準化でグローバル化し、高度化で暗号化する
   
2.
コアプロセス再設計のマネジメント
企業進化のソフト課題の解き方

3.
「進化」をデザインする経営モデル
コアプロセスの継続的革新を実現する〈交響〉のメカニズム

4.
知の統合基盤の再構築と新たなミドルの誕生

5.
会社ノ扉ヲ開放セヨ!
「変化」を常態化し、「進化」につなげるメカニズム
   
6.
イノベーションの進化
ブレークスルーの確率を高めるプロセスとは

7.
汎アジア業務プロセス革新
「知」の共有化を通した企業進化の可能性

8.
民活時代における行政コア業務の変革
新たな役割を果たすために

9.
人材と組織を共進化させる

10.
攻撃的企業進化
ゆっくりと激変を仕掛ける

11.
進化をつかさどる人材開発
プロセス革新をリードする人材をいかに開発するか

12.
サムスンに学ぶ進化の秘訣

【心理学ゼミナール】
動く組織を作るためのプロセスマネジメント

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【巻頭言】
経営進化モデル
プロセス革新で勝つ経営

 

ワトソンワイアット株式会社
代表取締役社長
淡輪 敬三

 日本企業が急速に浮上しつつある。これが、企業変革の最前線に日々立ち会っているコンサルタントとしての実感である。この実感に基づいて、前回のワトソンワイアットレビューでは、「新成長主義」のコンセプトを掲げ、日本企業の21世紀型成長のシルエットを描いてみた。その中で、特に「志」の側面を強調した。
 本レビューでは、この「志」を実現するために、日本企業が継続的に競争力を高めていくカギは何かを考えてみたい。つまり、自社のマーケットがプラスに反転したタイミングをとらえ、生き物である企業が、成長を持続できる一段高いバージョンの肉体へと、いかに「進化」すべきかを論じたいと思う。
 再び市場変化が負に転じるときに、新たな「失われた」年月が再来しないためにはどのような「準備」をすべきなのだろうか。

最も着目すべき「コアプロセス」

 一段進化した企業を作り上げるための「切り口」は何か。最近の複数の企業改革のプロジェクトの経験に基づけば、そのカギは「コアプロセス」にある。つまり、企業の競争力の源泉となる「事業や業務の流れ」を再定義し高度化することが改革の本質である、との確信を持っている。
 それでは、日本企業は新成長主義を実現する「進化」に向けて、なぜ「プロセス」に焦点を当てなければならないのだろうか。これには、二つの理由がある。
 第一に、グローバル化の進展のため、日本中心で組み立ててきた従来のコアプロセスの枠組みが行き詰まっている。さらに、アジア各国、特に中国の重要度が劇的に高まった。
 このため、世界の最適な立地ポートフォリオで開発・生産し、世界四極の魅力ある市場に最も効果的かつ効率的に商品やサービスを提供するプロセスとその実施体制を、ゼロベースで組み立て直す必要に迫られているからである。要するに、有力な日本企業群が次々と「真の世界化」のフェーズに突入したのである。
 第二に、日本企業の強さの源泉は実はこの「プロセス基点」の発想や組織運営にあるからである。例えば、自動車や精密機械の分野では、日本企業が品質や技術開発面で、常に世界のトップに立ってきた。この主因に、日本企業の「摺り合わせ」プロセス文化がある。
 ある機能担当者としてコアプロセスに参加する社員は、自分の役割を柔軟に変化させながら、他のメンバーと濃密なコミュニケーションを繰り返し、アイデアを摺り合わせながら、より精度の高いプロセスへと改善を繰り返していく。
 現場第一線のリーダーたちが自律的にかつ柔軟に自らの役割を変化させて、互いにより効果的なつながり方を生み出していくような動きができること、これが日本型チームの強さの背景である。まさに「プロジェクトX」の世界である。
 しかし、長期間にわたってプロセスが固定していると、各機能が蛸壺化する。摺り合わせ文化自体が風化してしまう。この摺り合わせの強さをもう一度磨き直すため、プロセス自体を棚卸しし、組み替える必要がある。

プロセス革新モデル

 一方で、欧米型のチームは基本的に役割分担型組織である。まずはトップダウンでゴールを定め、これも基本的にはトップダウンで各メンバーの役割に分解する。あとは各個人が期日までに役割を果たすようにマネジメントし、弱いメンバーは入れ替えていく。例えば、環境変化が激しいソフトウェアの業界では、プロセスの摺り合わせよりも早く次世代商品へと代替わりしてしまうため、このトップダウン分解モデルのほうがスピードで勝てる確率が高い。
 このように考えると、日本企業の強さの源泉の「プロセス基点」発想とこのスピード対応で勝る「トップダウン分解」モデルをいかに融合させて、新しい日本企業の進化モデルを作り上げるかが今後の企業変革の焦点となるのである。
 この革新モデルを示したものが図1である。まず、経営トップが成長の方向をビジョンとして示す。そして、この戦略方向を実現する「コアプロセス」を再定義する。この新たなプロセスに関わる機能や要素を「統合」して、一貫した業務の流れとして組み立て直す。
 さらに、この新たに統合されたプロセスを顧客へのインパクトと全体の効率を劇的に高めるべく、「高度化」する。知恵を集め、ぶつけ合い、イノベーションにつながるような一種の「化学反応」を誘起させる場を仕組む。
 この高度化を経て、新たな各執行機能部門が個々にミッションとゴールを定め、仮説・執行・検証のマネジメントサイクルを回す「プロセス分散」マネジメントに分解していく。ここは、以前からの強みを存分に活かせるステップである。
 そして、この個々の検証結果と高度化プロセスの情報をベースに、経営チームが戦略方向を修正し、一段上位のマネジメントサイクルを回していくのである。
 この全体の革新ステップの中で、今日本企業があらゆる知恵を絞り出さねばならないのが、中段のコアプロセス再定義から高度化に至る、「プロセス革新」のステップである。

図1/コアプロセス視点の事業進化モデル

プロセス革新リーダーシップ

 このプロセスの「摺り合わせ革新」と「統合・分散のマネジメント」を融合したモデルをできる限り早いスピードで回し続けられれば、世界トップに躍り出ることのできる日本企業は多数存在する。
 ただし、明らかにこの全社レベルの経営進化のカギを握るのが、中段のプロセス革新を牽引するリーダーの競争力である。残念ながら、従来型の日本企業は、各機能の現場第一線が主役の「各部門最適」の歴史が長く、全体を見渡せるリーダーを育成してこなかった。
 その結果、このプロセスを牽引する統合マネジャーや、プロダクトマネジャー、事業責任者といった人材が質量ともに決定的に不足している。
 実は、このリーダー開発自体が企業競争力の根源にリンクした最も重要な「コアプロセス」であった。かなり長期にわたり世界中の企業から経営ベンチマークと位置づけられたGEにしても、今最も躍進著しいサムソン電子にしても、徹底的にこの「人材開発コアプロセス」を磨き、大きな投資を継続している。リーダー開発が企業進化のまさしく「コア中のコア」であることを知っているからである。

 事業コアプロセス革新は新たなリーダー開発の場を多数提供する。この事業と人材、二つのコアプロセスを徹底して高度化しながら連動させていく。世界のマーケットで「超一流」を目指す企業がいち早くゴールへ到達する有力な方法論である。

 今回のレビューでは「プロセス」に着目して、様々な企業進化の方法論を論じてみたい。「ぜひ、すぐに取り組んでみたい」と思う方法を一つでも描ければ幸いである。

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●淡輪 敬三 たんなわ けいぞう/ワトソンワイアット株式会社代表取締役社長。NKK、マッキンゼー・アンド・カンパニーのパートナーを経て、1997年より現職。戦略、組織、人材を一体で改革する変革マネジメントが専門。東京大学工学部航空学科修士課程修了、スタンフォード大学修士課程修了。